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大阪高等裁判所 昭和49年(行コ)12号 判決 1976年10月21日

控訴人

向日町郵便局長

福永昌也

右指定代理人

淵上勤

外七名

被控訴人

安田正志

右訴訟代理人

小谷野三郎

外七名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

第一被控訴人は、向日町局貯金保険課に勤務しているが、昭和四三年四月二二日控訴人局長から戒告処分(以下、本件戒告処分という)を受けたこと、その処分理由は、被控訴人が二月二九日組休の許可を得なかつたにもかかわらず勤務を欠いたことにあること、被控訴人は、本件戒告処分について人事院に審査を請求したが、人事院は、昭和四五年七月七日本件戒告処分を承認する旨の判定をしたことは、当事者間に争いがない。

第二本件戒告処分の適法性について判断する。

一組休の趣旨および付与基準

組休は、労働組合に所属する専従職員以外の職員が組合業務に従事する場合、その請求により与えられるものとして郵政省就業規則上定められた無給の休暇であること、同就業規則二八条には、「職員は、一、組合の大会、会議等に出席する場合、二、その他組合の業務を行なう場合、予め組休付与願を提出して所属長の許可を受けたときは、勤務時間中であつても組合活動を行なうことができる。」と定められていることは、当事者間に争いがない。

右争いのない事実に<証拠>を総合すると、次の事実が認められ(る。)<証拠判断略>

(一)  組休制度は、昭和二七年の公共企業体労働関係法の改正により郵政事業職員に団体交渉権が認められ、その組合の活動分野が拡大されたことに伴い、組合の組織、運営を円滑ならしめ、その権利の実質的な保障を与える目的をもつて郵政省と全逓信従業員組合との間に締結された、「職員の組合活動に関する協約」(乙第一一号証)中に、専従職員以外の職員が、組合の大会、会議等に出席する場合にとどまらずその他組合の業務を行なう場合において、勤務時間中であつても組合活動を行なうことができる旨、協約上の制度として定められたもので、右協約三条は組休の許可権を所属長に帰属させ、業務にさしつかえがないことをもつて、その許可条件とした。

(二)  右組休制度は、昭和二八年六月一〇日公達第六〇号郵政省就業規則(乙第一二号証の一、以下旧就業規則という)に組み入れられたが、その際、組休制度をもつて便宜供与であるとする当局側とその権利性を主張する全逓との間に、右協約の規定を就業規則に組み入れることの可否について意見の対立があつた。旧就業規則の解釈、運用等については、同年一二月二八日郵人管第四二九号通達(乙第一二号証の二)がだされた。

右協約が昭和二九年四月二五日限り有効期限切れとなるに及んで、全逓は労働協約再締結の申入れをしたが、当局側は右同様の見解のもと組休制度は協約条項になじまず、すでにその内容は旧就業規則に規定されていてそれにて十分であるとの理由をもつて、右申入れを拒否した。

(三)  昭和三二年ごろから全逓の闘争方針をめぐつて当局と全逓との間に種々の紛議を生ずるようになつたが、このような状勢のなかで、昭和三六年二月二〇日公達第一六号郵政省就業規則(乙第一号証、以下単に現行規則という)をもつて旧就業規則の全部が改正され、そのうち組休に関する規定については、その許可条件としての業務支障の文言が削除され、現行規則の解釈運用等についての同日郵人管第三八条通達(乙第一号証、以下第三八号運用通達という)中に同旨の文言を置いた。右の改正は、当局が現行規則二八条に組休が所属長の許可によつて付与される旨明記するに止めることにより、業務支障の場合のほか、正常な労使関係が保たれていないことを理由に組休を不許可にできる余地を残そうとしたものであつて、業務支障の解釈運用を変更する趣旨のものではなかつた。

(四)  当局は、業務支障の有無は、組休請求者の所属する職場全体の業務について、客観的に判断すべきものであり、常勤職員による勤務のさしくりが可能である限り、組休を付与するよう各所属長を指導し、組休制度の運用を図つてきた。しかし、組休については、年次有給休暇と異なり、欠務者につき後補充要員を確保する措置を講じない運用がされていたので、組休付与の場合は、組休を付与された職員が欠勤することによつて、その職場の業務運行上に支障を生ずることは避けることができないので、当局により単なる便宜供与であることを理由に、恣意的に運用されることを防止し、許可、不許可の運用の公正を期するとともに、組合の組織、運営を円滑ならしめるため業務支障の程度と組合の組織、運営上必要な組合活動の必要性とを較量のうえ、組休の付与基準を明確にする必要があつた。

その方法として、当局と全逓との間で、組休の対象となる組合活動の範囲を限定する方法で組休の付与基準を明確にすることとして交渉が行なわれ、その結果に基づいて当局の運用通達にその範囲を明示し、これにより取り扱つていたが、昭和三七年五月ころの交渉の結果、専従職員以外の職員が全国大会、中央委員会等一九種の会議に構成員として出席する場合を組休の対象として取り扱うことで、双方の了解が成立し、当局は、昭和三九年一二月二三日郵人管第二六八号通達(甲第一号証、以下第二六八号運用通達という)で、このことを各所属長に伝達した。なお、右交渉の際、全逓は、当局に対して組休の対象事項の一層の拡張と業務支障の要件の撤廃等を要求したが、当局の了解を得ることができなかつた。

(五)  実際の運用面においては、第二六八号運用通達によつて組休の対象となる会議に出席するものの組休請求が不許可になつた事例は殆んどなく、また不許可になつた事例についてもその大部分は当局と全逓本部との話合で解決されてきた。

以上の事実から、現行規則の定める本件組休制度は、組合員の就労義務と団結権との衝突の妥協あるいは調和として、もともと上記協約に基づき協約上の制度として定められたものが、旧就業規則から現行規則へと組み入れられたもので、当局が一方的に制度化したものではなく、全逓の組織、運営を円滑ならしめ、その権利行使に実質的な保障を与える目的をもつて、就業時間中の一定の活動について休暇を与えることを認めた、当局と全逓との合意に淵源を有する就業規則上の制度ということができる。

そして、右組休制度が労働組合の組合活動に対する便宜供与の一種であるとしても、それが就業規則上の制度として規定されている限り労働契約関係の一般的な内容として個々の労働関係の当事者を規律することになり、その意味で組休は就業規則上組合員に与えられた権利であるということができる。

ところで、現行規則には、組休許可の条件として業務支障がないと判断した場合との文言は明示されていないが、組休制度の根拠となつた上記協約、それを受けた旧就業規則には明記されており、現在は第三八号運用通達に明記されていて、その撤廃をめぐつて全逓との間で争われている以上、業務支障の有無が組休許否の条件として存在し、組休は、職員の請求により所属長の許可によつて付与されると解すべきである。

しかし、組休付与の許可条件としての業務支障の有無の判断は、上記の如く組休制度自体が就労義務と団結権との妥協、調和としての制度であり、組休による欠務者につき後補充制度を欠く以上、一般的には業務支障の程度と組合の組織、運営上必要な組合活動の必要性とを較量のうえ、具体的に決定されるべきであるというべきとしても、当局と全逓との交渉の結果、両者の合意によつて、専従職員以外の職員が第二六八号運用通達に限定列挙した一九種の会議に構成員として出席する場合、それに必要最少限度の日数については、原則として組休を付与すべき組合活動として承認され、その間、組休を付与された職員が一人休むことによつて通常生じる程度の業務運行上の支障は、予め受忍されるべき業務支障とし、回復が困難であるとか、回復に異常な期間を要するとかの特別な事態にないかぎり組休付与の許可条件としての業務支障にはあたらないとすべきことに落ちつき、その線にそつて組休の付与が行われていたというべきである。そして、組休制度が組合に対し、組合員の労働契約上の法律関係を通じて利益を与える形で、就業規則によつて規定され、組合員の組休についての利益は、組合の利益にいわばまつたく従属し、組合の統一的な処分のもとにはじめて機能を発揮するという関係にあることからいつて、右合意の趣旨は、そのまま、就業規則の組休の規定の内実として、労働契約関係に充填されたものとするのが相当である。

二右のような観点に立つて、本件組休不許可処分の適否について判断する。

被控訴人が向日町局貯金保険課外務係に所属し、集金業務と募集業務を担当していたこと、被控訴人は、二月二八、二九日の両日に開催された近畿地方本部青年部常任委員会に全逓京都地区委員として出席するため、控訴人局長に対し右両日の組休付与願を提出したが、控訴人局長は、同月二七日業務上支障があるとの理由で同月二九日の組休を不許可にしたこと、被控訴人が二月二七日から同月二九日まで三日間勤務しなかつたことは、当事者間に争いがない。

右争いのない事実に、<証拠>を総合すると、次の事実が認められ(る)。<証拠判断略>

(一)  当時の要員配置状況

向日町局貯金保険課は、郵便貯金関係と簡易生命保険関係の業務を担当しているが、このうち、保険外務係は保険の募集業務と集金業務を担当し、その人員構成は、課長代理一名、主任二名、一般外務員八名(被控訴人を含む)であつた。このうち、課長代理は、課長を補助し、右業務全般の整理、右職員らの指揮、課長不在の場合の課長職務の代行を担当し、主任二名は向日町局区内を二つに分割し、その各担当地域内の募集業務と保険事故の整理事務を担当し、一般外務員八名は、同局区内を八区に分割して、それぞれの担当区域内の集金業務や募集業務を担当していた。

しかし、保険外務係では、一般外務員八名のうち、三名が長期欠務していた(三区の樋口が一月一九日から五月一一日まで休職、六区の井垣が二月三日から三月八日まで研修所入所中、七区の北村が昭和四二年一一月一一日から公傷入院中)ため、三名の臨時雇が採用され、それぞれ右欠務者の担当区に補充されていた(三区に中塚臨時雇、六区に田中臨時雇、七区に寺川臨時雇)が、これらの臨時雇はいずれも業務に不馴れで補充の実を十分にあげ得なかつたので、さらに長谷川臨時雇を追加採用したほか、主任二名も本来の担当業務のほかほとんど常態的に集金業務の援助をしていた。

(二)  当時の業務運行状況

保険料の集金業務は、契約者との集金協定日が月末に偏る関係上毎月二六日を頂点にして、以後末日まで連日業務量が多く、この時期が月間を通じて最も繁忙である。しかも二月に日数が平常の月より少ない関係で、(昭和四三年は閏年で小の月にくらべ一日少いだけであるが)月末の業務量が二六日以降の短期日に集約され、その一日当りの業務量がさらに増加するのが通常である。

ところで、二月二六日前後の保険外務係全部の集金業務状況は、当日取立てる分として各日に担当者に交付される契約一口ごとの徴収原簿交付冊数と取立のできた取立冊数についてみると、二月二二日五六〇冊に対し二七八冊、同月二三日五〇九冊に対し三一八冊、同月二四日三三一冊に対し一一五冊、同月二六日一、二〇三冊に対し五九一冊、同月二七日一、三〇九冊に対し七五五冊、同月二八日九四二冊に対し五九四冊、同月二九日八五四冊に対し五八一冊であつた。そして、被控訴人の欠務した三日間に被控訴人の八区で集金を要する徴収原簿冊数は、二七日七二冊、二八日七五冊、二九日六二冊であつた。

一方、六区の田中臨時雇は、地理不案内のため道順組立指導に多大の時間を要したうえ、その集金を要する徴収原簿数は二七日には当日までの未取立繰越分をあわせて二二五冊、二八日八一冊、二九日六五冊であり、四区の中塚臨時雇が集金を要する徴収原簿数は二七日二一八冊、二八日六五冊、二九日七〇冊であり、右両名にとつていずれも正常な業務量を越えるものであつた。そのためさらに長谷川臨時雇、中村、望月両主任が、右臨時雇の集金業務を補助することとし、右主任二名は、ほかに本来の担当業務である募集業務と累積された事故処理、探問、および転入調査等の処理事務が約五〇件に達し、集金業務補助も意の如くならない状況にあり、さらに、中村主任は二月二二日出張、二三日から二七日まで年次有給休暇をとつていた(中村主任は二月二七日出勤した)。

なお、向日町局全体の月間集金率は通常九割七分前後であり、集金が局側の都合で契約者との協定日より数日遅れることは過去において決して珍らしいことではなく、また、各月の第一日は集金協定日とすることを避け、とくに協定日とした分のほか若干生じがちな前月未収分の取立に当るほかはほとんど、集金業務につかず業務研究会(当月の集金等の打合せ)をするのが通例であつたが、三月一日は業務研究会を行なわなかつた。

(三)  組休不許可の経緯

被控訴人は、二月二一日に同月二七日開催の全逓京都地区青年部の支部青年部長会議に出席のため欠勤届を提出して、これが承認を得ていたが、同月二四日午前八時半ころ、前記全逓近畿地方本部常任委員会の構成員であり、右委員会が前記第二六八号運用通達の指定する一九種の会議の一つに当るので、これに出席するため同月二八、二九日の両日の組休付与願を畑中課長代理に提出した。同課長代理は、右組休付与願用紙の欄外に押印し、被控訴人に対し同月二七日から同月二九日まで三日分の集金予定の集金カードについて道順組立と地図の作成を指示した。

畑中課長代理から右組休付与願の提出を受けた寺川常治貯金保険課長(以下、寺川課長という)は、既に承認済の同月二七日の欠勤に引き続き右組休を認めるときは、当時の要員配置状況、業務運行状況に照らして業務に支障をきたすというべきものと判断し、二月二六日午前中被控訴人に対して業務支障を理由に右組休付与願を不許可とする旨告げた。被控訴人は、同日午後一時ころ、全逓向日町局分会長の喜友名正治とともに、寺川課長に対して再度右両日の組休を許可するよう交渉したが、同課長はこれを拒み、被控訴人から提出されていた右組休付与願の欄外の畑中課長代理の押印を抹消して被控訴人に返戻した。

右喜友名正治は、池沢全逓洛西支部執行委員とともに、同日午後三時ころ梅原俊一庶務会計課長(以下、梅原課長という)に対し、被控訴人の組休付与願の処理について控訴人局長の決裁印を欠いていることにつき抗議するとともに、被控訴人の組休付与願を許可するよう申し出た。梅原課長は、「組休付与願を返還したことは手続上の瑕疵であるので、あらためて組休付与願を提出して下さい。事情を聴取し検討する。」と返答した。

そこで、被控訴人は、同日午後四時ころ、あらためて、二月二八、二九日の両日の組休付与願を梅原課長に提出した。そして、その直後、同課長は、被控訴人を呼び出し、二月二七日の欠勤を撤回して出勤できないか、或いはその欠勤を年次有給休暇に振替えられないか、同日半日でも出勤できないかと申入れ、被控訴人の意向を打診した。

控訴人局長は、同日午後六時ころ局議を開催し、梅原、寺川両課長らの意見を徴した結果、当時の要員配置状況、業務運行状況のもとにあつては、中村、望月両主任、畑中課長代理も集金業務を補助するとの前提で、被控訴人に二月二九日の出勤を命ずれば、被控訴人の二七、二八、二九日両日の集金業務の八割は消化でき、さして業務に支障を生じないとの結論に達したので、二月二八日の組休は許可するが、同月二九日の組休は不許可とする旨決定した。

これを受けて、寺川課長は、同月二七日電話で被控訴人に対しこの旨を告げて、同月二九日出勤することを命じ、控訴人局長からも、同月二八日、電報により、さらに労務連絡官を介して再度同月二九日の出勤を命じたが、被控訴人は、直ちに全逓本部に指示を仰ぎ、その指示に従つて右決定を違法として出勤命令にも応ぜず、同日には予定どおり前記委員会に出席した。

そこで、上記組休付与基準に照らして、以上の認定事実関係のもとにおいて、控訴人局長がなした業務支障の有無の判断について検討するに、控訴人局長は、被控訴人の二月二七日の欠勤および同月二八日の組休によつて生ずる業務運行上の支障は受忍すべき業務支障と認定しているが、控訴人局長は、被控訴人の二月二九日の組休による業務支障についても、被控訴人が組休を請求した会議が第二六八号運用通達で指定した会議であること、右(一)、(二)認定の当時の要員配置(二六日局議のときは二七日中村主任は年次有給休暇で欠勤予定、但し、同月出勤した)、業務運行状況(二九日の業務は二七、二八日の両日に比して少ない)のもとにあつて、中村、望月両主任、畑中課長代理が集金業務を補助すれば、被控訴人が二月二九日の組休をとつても、著しい業務運行上の支障は生ぜず、二月分の未収金は三月一日にほとんど取立できることが予測できていたとみとむべきことに鑑み、被控訴人一人が二月二九日休むことによつて生ずる程度の業務運行上の支障は、なお受忍すべき業務支障で、組休許可の条件としての業務支障にあたらないと判断すべきであつたというべきであり、業務支障にあたるとした控訴人局長の判断は著しく合理性に欠け許可の条件たる業務支障以外の異質の考慮が加わつた結果と解するほかはなく組休許否のための判断としては不当であり、本件組休不許可処分は違法であるといわねばならない。

前顕各証拠によれば、現に被控訴人の担当していた八区の二月の月間集金予定額は一三一万七、〇〇〇円、要徴収原簿冊数は八四二冊であつたが、これに対する集金月計は一一〇万八、七九五円で、差引き二〇万八、二〇五円の末収金を生じ、その集金率は八割四分一厘であつたこと、向日町局全体の二月中の未収金合計額は五二万九、二六七円であり、その集金率は九割六分一厘であること、したがつて、被控訴人の担当する八区の集金予定額および要徴収原簿冊数の同局全体のそれに対する比率は約一〇分の一であるが、同区の未収金額は同局全体のそれの約五分の二の比率を占め、またその集金率は同局全体のそれより一割二分低いが、これは、被控訴人が三日間連続して欠勤したこともその一因であるが、むしろ、同区が他の地域に比べて遠隔地にあつたこととくにまた、同区の集金ないし募集事務は三月一日以降被控訴人が出勤すれば通常の能力を回復するが、前記四区六区七区の能力低下の状況は三月に入つても継続するものであり、集金の持越を防止する必要が特に大きかつたことから応援要員である主任、臨時雇、課長代理を八区より他の区域の集金業務の補助にあたらせた方が同局全体の集金率を確保するうえに得策であるとの寺川課長の適切な判断により、被控訴人の右欠勤期間中被控訴人の担当区域について右応援要員による集金業務の補助が殆んど行なわれなかつたことによるものであること、被控訴人は、担当区域における二月中の未収金を三月一日長谷川臨時雇の補助を得て殆んど回収し、同日春斗の賃金討論集会出席のため翌二日の欠勤届を提出し、その承認を得、同日欠勤したこと、被控訴人の右三日間の欠務によつて契約失効等の実害や契約者からの苦情はなかつたことが認められ、右の事実は、控訴人局長の業務支障の判断が、業務支障の判断としては、合理性を欠く証左となる。

そして、組合休暇が、もつぱら、組合員たる職員が、組合の特定具体的な活動に参与すべき任務の遂行のために与えられるものであり、その時点で職員としての職務と組合員としての右の任務とが、二者択一の関係にあることに対する手当を講じたものであることから考えて、組合休暇を許可すべき場合に違法に不許可処分がなされたときには、上記就業規則の性格からみて、許可があつたときと同様、その職員は服務義務から免れると解すべきであり、このことは組合休暇が許可によつて与えられるとすることと矛盾するものではない。

そうすると被控訴人が、上記認定の事情のもとに、本件不許可処分を受けたまま職務をはなれたことを職務上の義務違反というべきではなく、被控訴人局長の上記出勤命令も、単に組合休暇不許可処分の裏返しにすぎず、別個独立の職務命令の意味をもたないことが明らかであるから、これに服しなかつたことも組合休暇不許可処分に従わずに職務をはなれたこと以上の意味を持たず、独立した職務命令違反の行為というに値しない。

したがつて、本件戒告処分は、懲戒事由を欠き、違法として取消を免れないといわねばならない。

第三さすれば、被控訴人の本訴請求は理由があり、これを認容した原判決は相当であるから、本件控訴を棄却すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(鈴木敏夫 三好徳郎 鐘尾彰文)

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